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【信州大学教育学部附属長野中学校×生活協同組合コープながの×NSP③】「生産現場~小売店で出るフードロス」について学びました

2023年09月05日

生活協同組合コープながのさん・JA全農長野さんのご協力のもと、

「生産現場~小売店で出るフードロス」について学びました

 

信州大学教育学部附属長野中学校では、「あさひのプロジェクト」という学校独自のプロジェクトに、3学年全生徒205名で取り組んでいます。

 

今回NSP事務局は、「生活協同組合コープながの」さんと共同で、企業から提示された社会が抱える「課題」に対し、生徒が創意工夫を凝らしながら解決へと導く「企業ミッション」に参加。「フードロス削減」に関する課題解決に取り組む生徒2名をサポートしていくことになりました。

 

今回は7月11日から12日の2日間にわたり、食材が生産現場からスーパーに並ぶまでを見学。コープながのさん・JA全農長野さんに全面協力いただき、食材が消費者の手に渡るまでにどのようなフードロスが出ているのかを探ります。

 

1日目は「生産現場~出荷されるまで」を見学しました。

まず向かったのは、飯山市にあるぶなしめじの生産工場。きのこ栽培は徹底的な「殺菌」や毎日の「温度調整」が必要不可欠ですが、この工場では、培地(きのこの生育環境)を殺菌するための窯を最新鋭の機械に入れ替えることでエネルギーコストを削減。今後は空調設備も新調し、さらなるエネルギーコスト削減を目指すのだそう。

出荷前のぶなしめじは人の手で瓶から取り外され、パッケージに詰められます。その数なんと1日で4000株。欠けてしまったぶなしめじもバラ売りパックに詰められ、余さず出荷されるため、生産現場で「食べられるのに捨てられる」きのこはありませんでした。

最後にきのこの収穫体験をさせていただきました。この工場では、自然に近い状態できのこを育てるために、3~5年熟成させたおが粉を使用しています。そのおかげで一般的なぶなしめじ1パックの平均重量が100gのところ、ここで生産されたぶなしめじはなんと250g以上!2人とも上手に収穫できました。

 

次に向かったのは「JAながの みゆき きのこセンター」。ここでは農家さんからぶなしめじを集荷して検品を行い、スーパーなどの小売店へと出荷しています。ぶなしめじの他にも、エリンギやえのきたけなど品目ごとに倉庫があり、それぞれに適した温度で管理しているのだそう。検品中に異物を見つけた場合、そのパックは安全・安心のため「製品ロス」として処分されてしまうそうですが、各工場でしっかりと品質管理されているため、製品ロスはほとんど出ないそうです。

また、夏場はきのこの需要が減少するため、フードロスを削減するためにも生産量を冬場の50%ほどに抑えるよう、JA側から呼びかけを行っているのだそう。その他にも、生産している段ボールなど包装資材に工夫を加えることで、エネルギーもコストも削減しているそうです。

 

次の見学場所は「JA北信州みゆき西部カントリーエレベーター」。「カントリーエレベーター」とは生産者が共同で利用できる施設(大型倉庫)のことで、ここではお米の乾燥や貯蔵、精選、もみ摺りなどをして出荷しています。作業の間には、くず米(粒の小さいお米)や、もみが取れてしまったお米、だっぷ米(玄米)など「白米」として出荷できないお米が出てしまうそうですが、くず米はブレンド米や加工業者へ、もみが取れてしまったお米は雑穀米へ、だっぷ米は専門の買い取り業者へと、すべて売り切ってしまうのだそう。もみ摺りで出たもみがらも、たい肥や家畜の餌としてリサイクルされており、カントリーエレベーターで廃棄になるものはほとんどありませんでした。

 

この日最後に向かったのは、「JAながの みゆき野菜花き集荷所」。ここでは野菜や花の選果・集出荷をしています。基本的に選果は集荷前に農家が行っているため、選果場でのロスはほとんど出ないのだそう。規格外の野菜があったとしても加工業者に買い取ってもらうため、捨ててしまうことはないそうです。また、少ないコストで高品質の野菜を生産できるよう、農家を対象に「目揃え会」という勉強会を実施。生産の段階から、できるだけフードロスを減らせるよう工夫しているそうです。

ただし「製品ロス」として、天候の影響で腐ってしまったり、虫がついてしまった野菜を廃棄することはあるのだそう。できるだけ製品ロスを減らし、新鮮な野菜を届けるため、集荷所に集められた農作物は5℃の冷蔵庫に入れられ、野菜によっては「差圧予冷」という特別な冷却システムで急激に冷やされ、出荷されます。集荷所の所長さんが「農家もJAもできるだけ作物はお金に換えたいので、『規格外だから捨てる』ということはまずないんですよ」と教えてくださいました。

 

生徒2名はここまで見学してきて、「生産から出荷までの間には、『製品ロス』はあっても『フードロス』はほとんどない」ことに気づき、驚いた様子。では、スーパーなどの小売店ではフードロスは出るのでしょうか?

2日目はその疑問を解消するため、安曇野市にある「コープ安曇野豊科店」を見学しました。「お店だと廃棄品がたくさん出てしまうのでは…?」と思いきや、基本的に「廃棄品はほとんどない」のだそう。天気や気温によって値引きの時間を調整することで、ほとんどの商品を売り切ることができるのだそうです。足が速い牛乳も値下げで売り切ります。お総菜は店舗内で作っており、17時頃から3割引き、閉店間際には半額にして売り切ります。肉や魚は廃棄が出てしまうこともあるそうですが、それも全体の0.3%程度に抑えられています。「長く揚げすぎてしまった揚げ物」などの製品ロスは、バックヤードで従業員に向けて販売。加工の時に出てしまう野菜の切れ端やキャベツの皮などは、ペットの餌用に欲しがっている人に寄贈するか、「ゼロワンダー」という生ごみ処理機に入れて、たい肥や家畜の餌にリサイクル。ゼロワンダーは1日に50kgほどの生ごみを処理できるそうですが、実際に処理するのは10kg程度とのことでした。

フードロスを出さない工夫が徹底されているコープですが、比較的売れ残って処分されてしまうのが、豆腐や生麵などの「日持ちしない加工食品」です。家庭では冷蔵庫のストックとして日持ち優先で購入されることが多く、消費期限間近のものを値下げしてもなかなか売れないとのことで、できるだけロスを出さないよう発注量で調整をかけているそうです。

 

予測や値引きを駆使して何とか商品を売り切る姿勢に、生徒2名もびっくり。「値引きで売り切ってしまうとは思っていなかった」「でも、『半額だから』といらないものも買ってしまうから、家庭のフードロスが増える原因にもなるのではないかな?」と意見を交わしていました。

最後にコープさんからこんな質問が出ました。

 

  • 生産現場ではほとんどロスが出ておらず、スーパーでの廃棄は1日に10kg程度だけど、例えば皆の学校の「給食」は1日にどれくらい残されているの?

→「3年生は一番少なくて2~3kg、2年生は次に少なくて5kgくらい、1年生はもっと多くて8kgくらい残しています」

 

なんと、「スーパーで出るロス」よりも「学校の給食の食べ残し」の方が量が多かったのです! この学びを、2人はどのように「行動」へとつなげてくれるでしょうか?次回の学びをお楽しみに。

 

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