NAGANO SDGs PROJECT主催

実施報告

JICA国際協力出前講座

団体名: 独立行政法人 国際協力機構

開催概要

国際協力とSDGs ~JICA海外協力隊・ウガンダでの経験を通して~

掲載日:2021年07月21日

7月21日(水) 松本市芳川公民館にて年に1回の特別出前授業を開催しました


今回の特別出前授業に参加したのは、松本市公民館長会のみなさん。講師は、JICA(国際協力機構)長野デスクで活動している木島史暁(きじまふみあき)さんです。


JICAは日本の政府開発援助(ODA)の実施機関として、JICA海外協力隊の派遣など開発途上国への国際協力を専門的に行っています。木島さんも、JICA海外協力隊として2018年10月から2020年3月のコロナが始まるまでの間、最近ニュースでも話題のウガンダで稲作栽培の研究員として派遣されていました。


「SDGsは世界の問題と地域の問題が複雑に絡み合っています。私からは世界から見たSDGs、地域から見たSDGsの両方を、経験を交えてお話しできらたらと思います」


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「196分の143」とは何の数字でしょう?


この質問から授業はスタートしました。答えは、196は世界の国の数、143は開発途上国の数です。世界の8割の約55億人が途上国で暮らしていて、まだまだ途上国がマジョリティという現状があります。


世界規模の問題として、切っても切り離せないのが今まさに流行している「新型コロナウイルス」。エボラやマラリアなど、これまで感染症は途上国だけの問題として捉えられがちでしたが、実は地球規模の課題であり、世界的な協力が必要不可欠であることを突きつけられました。


世界の問題としてもうひとつ「砂漠化」が挙げられます。毎年、東京ドーム128万個分の土地が砂漠化していると言われています。砂漠化しているその地域だけが砂漠化しないようにと取り組んでも限界があり、世界規模で取り組む必要があります。


このように、被害を受けている国だけ、途上国だけ、先進国だけで取り組んでもどうにもならない問題がたくさんあります。それらを、世界共通の課題として取り組もうと決められたのがSDGsです。


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「SDGsの最終的な目標は世界に焦点を当てられていますが、住みよいまちづくりや、環境問題など、内容は今まで国内でも取り上げられてきた問題なんですよ」と、木島さん。身の回りには、実はSDGsとつながっていることが多いそうです。


例として挙げていただいたのが、木島さんがふだん仕事をしている長野県庁でのこと。



  • 例1:階段に職員への階段利用を促すための表示がたくさん


→目標3 すべての人に健康と福祉を



  • 例2:玄関にインクカートリッジの回収箱


→目標11 住み続けられるまちづくり


→目標12 つくる責任 つかう責任


→目標13 気候変動に具体的な対策を


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ここからは、木島さんがJICA海外協力隊として活動してきたウガンダでのSDGsについてお話しいただきました。


SDGsがどのくらい達成されているかを示した「SDGsダッシュボード」と呼ばれるものがあります。6月に発表された2020年版によると、ウガンダは196か国中148位でした。達成されていない目標としては、例えば目標6「安全な水とトイレを世界中に」に関して。ウガンダでは基本的に穴を掘っただけのトイレを使用している現状があります。


<シミュレーション>


もし皆さんがウガンダに生まれたなら


まずは、公開授業の参加者全員(36名)が起立。生まれてから5歳未満で亡くなる確率が4.6%なので、2名が着席。続けて、小学校就学率が91%なので、3名が着席。最後に、最終学年まで残る確率が34.5%なので20名着席。最終的に立っている人は11名でした。つまり、無事に生まれて、成長し、小学校を卒業するウガンダの子ども人数はかなり少ないのです。参加型のシミュレーションを通して、ウガンダの子たちの現状を身近に感じることができました。


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最後に、「どうして国際協力が必要か」、一つの考え方を木島さんが解説してくれました。


日本国内にも様々な課題があるのに、なぜ途上国への協力が必要なのでしょうか。それは、日本と途上国には相互依存の関係があるからです。


私たちが普段食べている野菜や果物、魚などは半分以上を海外から輸入しています。日本の食料自給率はかなり低く、たったの37%。主に農業を重要な産業にしている開発途上国からの輸入に頼っています。もし開発途上国の情勢が乱れて取引がストップしてしまったら、私たちの食卓からは6割以上の食材が消えると言われています。


逆に、日本からも車や電気製品などを途上国に買ってもらっています。お互いにとって良いパートナーなので「相互依存」の関係と言えます。世界が安定することは、私たちの生活が安定することにつながります。そのために国際協力をする必要があり、SDGsの達成を目指さなければならないのです。


SDGsの達成度に関して、日本はまだまだ達成できていない目標が多く、SDGsの観点から見れば途上国。いきなり世界に目を向けて動くことは難しいので、一人ひとりが身近なところから動いていくことが大切です。


「SDGsを達成するための手段は、私よりもみなさんの方がご存じかと思います。ぜひ、若者に知恵を授けていただければと思います。」経験豊かな参加者たちに訴えかける木島さん。松本市内の地域活動を通して、これからSDGsの輪はどんどん広がっていくのではないでしょうか。


出前授業の様子をアンケートでご紹介します。


・今後は、自分・家族・公民館で何が出きるか考える。家族、公民館職員と共有したい。


・テレビ等でSDGsという言葉は耳にしていたが実際理解できていなかったので説明していただき理解できた。


・R30までに目標が達成できなかった場合世界はどうなるのだろうか。


・コロナの感染状況を考慮して考えると(検査などの対応が進んでいない)、日本は後進国だと思うのでこのSDGsこそ力を入れて努力したい。


・新しい公民館事業に取り入れたい。