NAGANO SDGs PROJECT主催
実施報告
団体名: ラマ色コラボ
掲載日:2024年10月06日
5月12日(木) 諏訪市立上諏訪中学校で行われた出前授業の内容をご紹介します。
授業:未来と向き合うSDGs~この気づきは探求心を刺激する~
講師:ラマ色コラボ 北原照美氏・丸山亜希氏
【ベトナムと日本の関わりについて理解しよう】
本日は諏訪市立上諏訪中学校の2年生、2クラス54名が出前授業を受講しました。講師はラマ色コラボの北原照美さんと丸山亜希さん。そして、今回のテーマは‶水″。水を取り巻く私たちの今の生活スタイルは、どのように環境へ負荷を与えているのか、理解を深めていきます。まずは、日本と深く関わりのある国名当てクイズから授業開始です。
〈ワーク〉衣類、スマートフォン、コーヒー、エビ。この4つに共通する、日本と深く関わりのある共通の国は?
生徒さんたちは、グループごとに、意見を出し合ったり実際に着ている服のタグを確認したりして、「これ中国製だよ!」「コーヒーと言えばブラジルじゃない?」どんどん国名をあげていきます。最終的にブラジル、アメリカ、中国、インドネシアとそれぞれが予想。正解の国名はベトナムだったのですが、予想外だったのか驚きの声が続出していました。
ベトナムは、上記4つの製品が日本への輸出量トップ2に全て入っていて、日本とは深く関わりがあります。北原さんは、日本人が1年で購入する衣服は平均で18枚であることなど具体例をあげ、日本人の生活にベトナムは身近であると説明してくれました。
【水の真実について知ろう】
いよいよ今回のテーマである‶水″について深く学んでいきます。
2019年、アメリカで行われた国際会議に出席した小泉進次郎環境大臣(当時)が、アメリカで何を食べたいか聞かれ「ステーキ」と答えたことで、欧米のメディアから非難されたそうです。それはなぜでしょうか?
牛は、1日あたり50ℓほど水を飲み、エサを6~10㎏食べます。そのエサは穀物が主で、トウモロコシは1㎏育てるのに1800ℓの水を使用します。計算してみると300gのステーキをつくるのに6800ℓの水が必要ということになります。また、牛がするゲップにメタンガスが含まれており、温暖化の一因となっています。環境に悪影響を及ぼしている牛を食べたいと、環境大臣が平気で言ってしまったことが問題だったのです。
★地球は‶水″に囲まれている。なぜ大量の水を使うことが問題なんだろう?
地球上には多くの水がありますが、実際に使用できる淡水はたったの0.01%だけ。お風呂一杯の水を地球上の水と仮定すると、ほんのスプーン一杯分だそうです。そして、安全な飲み水をすぐに手に入れることができない人々が、世界に21億人もいます。水資源は非常に重要なため、往復1~2時間かけても水を運ぶ子供がいたり、水を巡って各地で紛争が起きていたりします。また、このような国の人々は、1日30ℓ以下の水で暮らしていたりしますが、日本人は1日平均約214ℓの水を使用しているそうです。生徒さんたちは「こんなに格差があることは知らなかった!」と水の真実について衝撃を受けているようでした。
【食品・製品の「ウォーターフットプリント」を考え、使用される水の量や環境の負荷について考えよう!】
★ウォーターフットプリントって?
モノやサービスを生産する過程で使用された「水」の総量をはかる概念を「ウォーターフットプリント」と言います。
〈ワーク〉綿のTシャツ1枚、スマートフォン、コーヒー1杯、生春巻き(エビや野菜を使用)について、水の使用量の多い順に並べてみよう。
・「エビや野菜は育てたり洗ったりするのにたくさん水を使いそう!」
生春巻き→Tシャツ→スマートフォン→コーヒー
生春巻き→Tシャツ→コーヒー→スマートフォン
生春巻き→コーヒー→Tシャツ→スマートフォン
各班で話し合われた順位を共有してみると、多くのグループがエビや野菜の入った生春巻きが1番水を使用していると予想しました。北原さんが答えを伝えるとまたもや驚きの声が!答えは、Tシャツ→スマートフォン→生春巻き→コーヒーで、1番水の使用量が多いのはTシャツという結果でした。綿花の栽培をはじめ、Tシャツを作る過程で大量の水が使われているそうで、2位のスマートフォンと比べても圧倒的な水の使用量でした。
〈ワーク〉綿花を栽培する→紡いで糸にする→糸を染色する→綿生地を縫う、Tシャツをつくる工程で、それぞれ環境にどんな影響を及ぼすのかを考えてみよう。
何が環境に影響を及ぼすか、スライドをじっくり見て、生徒さんたちがグループで考えた意見を発表しました。
・綿花を栽培する
綿花を育てるときに水や殺虫剤を使う。また広大な土地が必要になるため、森林を伐採しなければいけない。
・糸を紡ぐ
機械を使用するのに、燃料をたくさん使う、洗剤や薬品を使う
・染色する
少量の着色料を溶かすのに大量の水を使う。そして、着色された水をそのまま捨ててしまうことで、水質汚染になる。
・縫う
ミシンなどで多くの電力を使う、布の切れ端を捨てる
生徒さんのたちの発表を受け、北原さんがより詳しく解説をしてくれました。
カザフスタンでは、綿花栽培のために無計画に農園を拡大させ、アラル海が半世紀で10分の1までに干上がってしまったそうです。失われた面積は、実に東北6県分!その影響で生態系が壊れてしまい、漁業もなくなり、人口も減少してしまいました。また、綿花は害虫予防の薬も多く使用されており、土壌汚染にも繋がっています。
【環境だけじゃない。負荷は他にも・・・】
実際にTシャツを作っているのは、ベトナムやバングラデシュなどの開発途上国の労働者です。低賃金で過酷な労働環境で働いている人が非常に多いそうです。
多く人によって手間暇かけて作られるTシャツを、先進国で私たちは1000円以下でも買えますが、実際にどのような過程を経てつくられるのかを知り、そこに潜む課題を考える大切さを北原さんは教えてくれました。
【私たちにもできる!エシカル消費】
多くのものが安く買える今の時代、衣服も例外ではありません。ですが、流行おくれ、シーズンの入れ替わりなどで廃棄となっている衣服が、年間約51万t・30億着もあるそうです。再資源化されているものは5%ほどで、残りは焼却・埋立処分されています。大量の水が使用され、苦労して作られたものがこれだけ捨てられているのです。その中で、私たちができることは何でしょうか。それは良いものを選び消費する=「エシカル消費」をすること。こうしたちょっとした購買活動が、社会を変えていく第一歩となります。
最後に、生徒さんたちに「現在、何が課題なのか」「これからどんなことを調べてみたいか」「2030年にはどうなっていてほしいか」を世界と諏訪の視点から考えてもらいました。
・大量の水を自由に使える人と、少しの水も使えない人がいて、格差があること。
・1つの製品に大量の水が使用され、深刻な環境問題を生んでいること。
・衣服を作ってくれる人々の労働環境が悪いこと。
・普段自分たちが食べているもので、何が1番多く水を使用しているのかを調べてみたい。
・他にどんなことにたくさん水を使っているのかもっと知りたい。
・環境への負荷が減って、今より自然災害が少なくなっていてほしい。
・世界で水の使い方を改めて、みんながきれいな水を使えるようになったらいいな。
・諏訪湖を誰か一人ではなくみんなできれいにする努力をして、諏訪を明るくていい町にしたい。
代表の生徒さんは、「身近なものに多くの水が使われていることを初めて知った。普段自由に水を使用できるのが当然ではないということ、これから僕たちにできることは何かを考えていきたい」と発表してくれました。
私たちの身の回りにあるモノやサービスが、どこの国で、どんな企業が、どんな人が、どんな材料を用いて、どのような工程を経て、作られ、手元に届いたのかを想像してみると、商品・製品に対する見え方が変わってくるかもしれません。
北原さんは、「今日学んだことを家に帰って、お家の人に話してください。お母さんの行動が変わるかもしれません。思っているだけでは変わらない。廊下のポスターにあったように、アクション・リアクションしていきましょう!」と授業を結びました。
<参加された生徒さん達の感想をご紹介します>
・自分達が今まで当たり前だと思っていた水は、他の国では1日3ℓの貴重な物だったり、当たり前ではないことを知って、ショックだった。また、今自分ができる事をしっかり行って、少しでも水を使う量、SDGsの事が良くなっていって欲しいと思った。
・今まで知らなかったSDGs、水のことを深く知ることができた。普段使っている水がこんなにも大切だということが分かったので、今後どうしたら改善できるかなど調べていきたいです。
・世界にはあまり水が使えていない国がたくさんあるから、みんなが使えるように水の使い方を考えていきたい。
・身近なことを通して水についての勉強をすることで、問題を他人事ではなく考えられた。
・自分で考えたりする時間が、とってあってすごく聞いていて面白かった。あまり考えたことのない方向の考え方で、また違った見方ができて良かった。
・今回学んだ様々なことを通して、自分たちで発信していけるようにしたいです。
・もっと環境破壊しないために自分たちがどんなことをすればいいか考えていきたいです。
・私はSDGsといえば「地球温暖化」とぐらいにしか知識がありませんでしたが、水不足や服のロス等、たくさんの問題が世界にあることを知ることができました。世界のたくさんの問題から目をそむけず、「エシカル」な目線をもち(もっていきたい)、今、自分でもできることはあるかとか、わずかな行動から、世界にと思いました。
・今まで水は無限にあるとか思っていたけど、全然違っていた。水の大切さがとても分かった。
・「水」をテーマにSDGsのことについて考えてみて、僕は「水」は無限にあるだろう、と考えていましたが、「水」には制限があって大切な資源ということが初めて知れたのでよかったです。また人々が生活を便利にすることで、自然などの大切な土地がどんどん少なくなっているのも学べたので良かったです!
・今すぐに水を飲めない人が、21億人もいるという現状を聞き、少しでも節水して、水を届けられていれるような2030年であってほしいと思った。