実施報告


開催概要

9月5日(金)【出前授業レポート】須坂市立東中学校

掲載日:2025年10月30日

須坂市に本社を構える「アトリオン製菓株式会社」さんと、千曲市に本社を構える「株式会社長野サンヨーフーズ」さんによる特別授業が、須坂市立東中学校で行われました。今回授業を受けたのは、全学年から縦割りで集まった同校の生徒14名。世界で広く栽培されており、長野でも少しずつ普及している「ソルガム」という穀物を調理して、食材としての特長や味わいを体験したり、SDGsの観点から見たその可能性やメリットについて学びました。

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今回の授業は、「ソルガム」と「SDGs」がどのように関わっているのか、というところからスタートしました。授業を担当してくれたのは、アトリオン製菓株式会社の高宮さんと、その協力企業であり、ソルガムの加工などを行っている株式会社長野サンヨーフーズの方々です。


そもそも、ソルガムとはアフリカ原産のイネ科モロコシ属の穀物で、日本では別名「たかきび」とも呼ばれています。世界の穀物の中でも、トウモロコシ、小麦、米、大豆に続いて多く消費されている重要な農作物です。そんなソルガムが、なぜSDGsと密接に関わっているのでしょうか? それは、ソルガムが環境保全や食糧危機、エネルギー問題などさまざまな課題に対して解決の可能性を広げる「サステナブルでやさしい農作物」だから。

「SDGsというと『環境問題』ばかりに注目しがちですが、環境を大切にしながらも、便利な暮らしを両立させていくことが大切です」と高宮さん。そう、ただ環境にやさしいだけではなく、みんながより便利で豊かに暮らすにはどうすればいいのか、私たちは考えていく必要があり、ソルガムはそのための大切な「鍵」となる可能性があるのです。



続いて、長野サンヨーフーズの山根さんがソルガムについてさらに詳しく解説してくれました。ソルガムは世界的に栽培されており、最大で高さ3メートルほどに成長する植物です。水や農薬を多く必要としないため、水不足や土壌汚染といった課題の解決につながります。加えて子実は食用、茎や葉は建材やきのこの培地として、またソルガムの残渣はメタン発酵プラントとなり再生可能エネルギーを生成します。さらに、ソルガムはアレルゲンフリー&グルテンフリーで、誰でもアレルギーを気にせずに食べることができます。まさに、地球にも人にもやさしい農作物といえるでしょう。粒や粉の状態で調理できるほか、アーモンドミルクや豆乳のように植物性のミルクを作ることもできるなど、食材としてもさまざまな可能性を秘めているとのことでした。


実際にソルガムミルクを試飲してみると、豆のような独特の風味と、おしるこのような舌ざわり。そして、しっかり甘い!砂糖は入っていないとのことで、これはソルガムに含まれるデンプンを酵素分解して得られる自然な甘みなのだそうです。生徒からは「思ったよりおいしい」「甘酒みたいな味がする」といった感想が聞かれました。


今回はそんな「ソルガムミルク」を使って、「ソルガムプリン」を作ります。実はこの授業の前にも、生徒たちはソルガムを使った調理に挑戦していたそうですが、取り扱いが意外と難しく、失敗したグループもあったようです。作り方を教えてくれたのはアトリオン製菓の内藤さん。「今回は調理しやすいソルガムミルクを使うから、失敗しないはずだよ!」と、生徒たちを励まします。みんなで調理室に移動し、説明を聞きながらプリン作りに挑戦です!



【ソルガムプリンの作り方】

1)ソルガムミルクと砂糖を計量し、プリンカップの中で砂糖が溶けるまでよく混ぜる

2)ゼラチン粉末と水を計量し、よく混ぜた後レンジで加熱する

ゼラチンが溶けきるまで追加で加熱しながら混ぜる

3)ソルガムミルクとゼラチン液を混ぜ合わせ、冷凍庫で15分冷やす。固まったら完成♪


手順はシンプルですが、ソルガムミルクや砂糖、ゼラチンの分量を正確に量る必要があり、生徒たちは少し苦戦しながらも、班ごとに協力してソルガムプリンづくりに取り組んでいました。



プリンが固まるのを待つ間、アトリオン製菓さんと長野サンヨーフーズさんが協力して進めているSDGsに関する取り組みについてのお話がありました。長野サンヨーフーズさんでは、いちごをジュースやソースに加工する際に出る裏ごし後の残りかすを「いちご果蜜(かみつ)」というソースにアップサイクルし、廃棄量を1/4にまで削減することに成功しました。この「いちご果蜜」は、アトリオン製菓さんの製品「ヨーグレットグミフリュイ いちごヨーグルト」に使用されたのだそう。

「今まで捨てていたものを活用することは、経済的な課題の解決につながるし、環境破壊を防ぐこともできます。SDGsについて真剣に考えることは『企業努力』なんです」と高宮さん。    



 


 


お話が終わる頃、ちょうどソルガムプリンが固まり、いよいよ試食タイムです。そのお味は…?「なんかあずきみたいな味がする!」「ソルガムジュースのまんまの味だ~」「ようかんみたいだね」など、さまざまな感想が飛び交います。

するとそこに、高宮さんと内藤さんが何やら袋を持って登場。中にはパチパチパニックやヨーグレット、ハイレモンなど、アトリオン製菓さんのお菓子がぎっしり!さらにホイップクリームも配られ、「自由にトッピングしてね!」との言葉に、生徒たちは大喜び。お菓子やクリームをたっぷり使って、思い思いのトッピングを楽しみながらソルガムプリンを味わいました。

生徒たちからは、「前にソルガムでカップケーキを作ろうとしたけど難しかった。今回は簡単で驚いた!」との声も。中にはソルガムで麺を作ろうとしたチャレンジャーもおり、その時は大失敗に終わったそうですが、今回は「簡単でおいしくてすごい」と満足そうに話していました。


「持続可能」というのは、ただ我慢や苦労を重ねて達成するものではなく、みんなで協力しながら楽しく、おいしく、不便なく実現していくものなのだ―そんなメッセージが伝わってきた授業でした。東中学校の皆さんが、今回の学びをきっかけに、今後も楽しくSDGsに取り組んでくれることを願います。